仕事が辛いと感じたら?原因分析の方法と具体的な対処法、仕事を辞めるべきサインを解説
監修者

藥井遥
やくい社会保険労務士事務所代表
■資格
社会保険労務士
国家資格キャリアコンサルタント
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
産業カウンセラー
この記事でわかること
- 労働者の82.7%は仕事に対して辛さを感じている
- 仕事が辛いと感じる理由は「人間関係・仕事内容・給与・組織文化・環境変化」など様々
- 今の仕事を続けるべきか転職をするべきか、客観的に判断することが大切
仕事が辛く「朝、会社に行くのが憂鬱」「仕事中、涙が出そうになる」「もう限界かもしれない」と感じることもあるでしょう。このような状態になるのは、決して甘えや弱さがあるからではありません。
仕事のストレスやプレッシャーから心身に不調をきたすのは特別なことではなく、多くの人が経験しています。
仕事が辛いと感じた際は、体や心が重要なSOSサインを発しています。状況を改善するには、早期に体や心の変化に気付き、適切な対処法を見つけることが大切です。
専門家からのファーストアンサー: 仕事が辛いと感じることは決して甘えではありません。まずは無理をせず心身のケアを優先しましょう。そのうえで辛さの原因が一時的なものか、職場環境などの根本的な問題なのかを見極めることが大切です。退職する決断は心が疲れている時は保留にし、経済状況や今後の生活設計もしっかり整理し、冷静に判断することをおすすめします。
労働者の82.7%は仕事に対して辛さを感じている
仕事では責任が生じるほか、人間関係に悩まされたり、ハードな環境で働かなければならなかったりすることで、さまざまなストレスがかかります。
厚生労働省が行なった「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関することで、強い不安・悩み・ストレスを抱えている労働者の割合は82.7%となっています。
仕事が辛いと悩んでいる人は、あなた一人だけではありません。また、決してあなたが弱いわけでも、劣っているわけでもないことを理解しておきましょう。
実際、「仕事が辛い」と感じた方からOpenWorkに届けられたクチコミもさまざまです。
退職検討理由: 精神的、肉体的にとても辛いです。ですが、これも向き不向きがあると思います。私には辛いだけで、楽しく働かれている方もいらっしゃいます。また勤務時間は朝早くから、繁忙月、人手不足の店舗によっては夜遅くまで。年末年始等、部門によっては夜の0時から勤務するような事もあるそうです。
この社員クチコミを見る >>女性の働きやすさ: 泊まり勤務があり、女性にはなかなかきつい仕事だと思う。少ない仮眠時間で翌朝仕事をするのが辛い。健康と体力に自信のある人には向いていると思う。育休産休などはしっかり取れるので、子供を産んで職場復帰する人も多く、その点はしっかり整っているかと思う。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 仕事内容は精神的にかなり辛い部類に入ると思います。様々な企業様にひたすらに電話をしまくり担当者に煙たがられながらも、コール数のノルマ等もあるため電話をかけなければいけない...私は精神的に病みかけました。適正があり活躍される方もいられますが、そのような方も給与面などで不満があり退職される方も多いです。
この社員クチコミを見る >>働きがい・成長: お客さんにも断られ、上司からも詰められ非常に辛い仕事だが、その中でもがき苦しみ契約していただいたお客様には感謝されるし、感極まって毎回契約のたびに泣きそうになった。
この社員クチコミを見る >>「仕事が辛いのは甘え?」その思い込みは危険
日本に普及した成果主義や社会問題となっている長時間労働などにより「仕事=辛いもの」というイメージが定着した一方で、「仕事を辛いということは甘えである」という考え方も一部残っているようにも感じます。
現在では働き方改革やメンタルヘルスを重要視するようになった社会変化によって見直されてきていますが、仕事の辛さを感じている方のなかには「甘えているのではないか」と自分を責めてしまう人もいるのが実情です。
先述したデータのように、多くの労働者は仕事に対して何らかの悩みやストレスを抱えています。ストレス耐性のキャパシティは人それぞれであり、辛さを感じる理由もさまざまです。そのため、一概に「仕事が辛いのは甘えだ」とは言えません。
「辛い」と感じる際には、心身からSOSのサインが発されています。
そのまま無理をしていると、心身に負担がかかって体調不良や精神疾患を招くこともあるので、放置してはいけません。まずは辛い気持ちを否定せず、受け入れることが大切です。
自分の「仕事の辛さ度」をチェックしよう
仕事が辛いと感じることは誰にでもありますが、それを我慢し続けると、気づかないうちに心や体に大きな負担がかかっていることがあります。正常な判断ができなくなったり、頭痛や不眠、気分の落ち込みといった不調につながることも少なくありません。
以下は、仕事が辛いと感じた人に表れやすいサインです。
- 朝、仕事に行くのが憂鬱だと感じることが多い
- 仕事中に集中できない、またはミスが増えたと感じる
- 食欲がない、または逆に食べ過ぎてしまうことが増えた
- 夜、よく眠れない、または寝ても疲れが取れない
- 仕事のことを考えると理由なく不安になったり緊張したりする
- 職場の人間関係でストレスを感じている
- 仕事量が多すぎる、または自分の能力を超えていると感じる
- 休日も仕事のことが頭から離れない、十分に休養できない
- 仕事に対してやりがいや楽しさを感じられない
- 体調がすぐれない日が増えた(頭痛、腹痛、めまいなど)
※このリストは、医療行為や診断に代わるものではありません。リスト結果はあくまで自己判断の参考としてください。
該当数にかかわらず仕事の辛さを感じているときは一人で悩まず、企業の専門窓口、働く人の「こころの耳相談」、メンタルクリニックなど、適切な窓口に相談しましょう。
なぜ仕事がこんなにも辛いのか?考えられる6つの原因
仕事が辛いと感じる原因には、仕事の内容や量、自分が置かれている環境などさまざまなものがあり、複数の原因が重なっていることもあります。
辛さに対処するためには、まず何が原因になっているかを把握することが必要です。考えられるおもな原因には、次の6つが挙げられます。
- 人間関係のストレス
- 仕事内容のミスマッチ
- 過度な仕事量や重い責任
- 仕事に対する評価や給料面での不満
- 会社・組織文化へのミスマッチ
- 職場の環境変化に対応できない
それぞれ、どのようなことが辛さにつながるのかを紹介します。
人間関係のストレス
上司の高圧的な態度やパワーハラスメント、同僚との不和・孤立・対立といった人間関係のストレスがあると、大きな負担になります。そのような環境のなかでも、コミュニケーションを取っていかないと仕事が進められず、神経を使うためです。
また、近年社会問題化しているカスタマーハラスメントも強いストレスや精神的ダメージとなり、仕事の辛さを感じる要因となっています。
OpenWorkに投稿された、人間関係のストレスに関するクチコミを紹介します。
退職検討理由: 精神的に限界を超えたため。ほとんどがお客様からのクレーム対応、または、流れ作業なため私はやりがいを感じることができなかった。生きている意味を見失って鬱状態になっていた。21時に帰宅して23時に就寝、3時起きまたは2時半おきがあるためいくら空港の近くに住んでいても体力に限界を感じた。寮でルームメイトと気が合わずプライベートが絶望的だった。結局接客業ではなく警備員なため向いている人と不向きな人に分かれる。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 上司の高圧的な態度、それを止めようとしない社内の雰囲気に耐えきれなくなりました。業界の問題なのでこれを理由に挙げるのはお門違いではありますが、ワークライフバランスが満たされない点、睡眠時間を満足に確保できず体調を崩してしまったことが理由です。
この社員クチコミを見る >>仕事内容のミスマッチ
興味の持てない仕事や苦手な仕事を続けなければならない場合にも、仕事の辛さにつながります。仕事の意義を感じられずにモチベーションが維持できず、自分のスキルを発揮できない状態が続いてしまうためです。
また、簡単過ぎる仕事や難し過ぎる仕事など、能力と合っていない仕事もストレスになります。
このようなミスマッチが生じている状態が続くと自己肯定感が下がり、さらにストレスが蓄積する悪循環を招きます。
OpenWorkに投稿された、仕事内容のミスマッチに関するクチコミを紹介します。
退職検討理由: 毎日同じことの繰り返しに飽きたため。機種責任者と言う管理職になっても、プレイングマネージャーに過ぎず、この会社ではこれ以上成長できないと感じたため。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 製造・生産技術スタッフに配属されたが、現場の使い走りのような仕事でやりがいがない。現場のマイナートラブルにもスタッフで対応せねばならず、前向きな仕事に取り組む時間がない。仕事を通じたスキルアップもしにくく感じる。
この社員クチコミを見る >>働きがい・成長: 一回もやりがいを感じたことはない。大卒でお年寄りの理不尽なクレームを対応することは接客という仕事では切っても切れないことだと覚悟はしていたんだけど、カード回収や荷受けなどのバイトさえできる簡単すぎる仕事をやらされてはやりがいが感じられる職場ではないと考えた。
この社員クチコミを見る >>過度な仕事量や重い責任
残業や休日出勤が多いと心身の疲労が取れないまま働き続けなければならず、いくらやりがいのある仕事でも、次第に精神的な余裕がなくなります。また、プライベートも犠牲になるため、心身に負担がかかり不調をきたしてしまうこともあるでしょう。
また、ノルマがきつい、常にプレッシャーがかかるといった環境も、辛さにつながる原因です。責任感が強い人ほど、責任を全うしなければならないという思いから、ストレスを感じやすくなります。
OpenWorkに投稿された、過度な仕事量や重い責任に関するクチコミを紹介します。
退職検討理由: 労働時間過多。入社月で残業80時間を超えており、体調を崩しました。
この社員クチコミを見る >>ワーク・ライフ・バランス: 基本的に残業は普通の社員で月平均45時間、リーダー以上で60時間。残業が当たり前の雰囲気。制度上は定時退社日などの設定はあるがあまり関係ない。休憩時間などを多く付けることにより目減りさせているだけ。休日出勤も申請や許可なく出来るためいつでも出来るし、している。
この社員クチコミを見る >>組織体制・企業文化: 営業ノルマは厳しい。みんな苦しみながら営業している。組織としても上からの圧力が強いのかノルマ達成に重点が行きがちになり顧客満足度が二の次になっているように思える。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 営業職で、ノルマが課せられている。非常に激務であり、身体をこわした。休みが取りづらい。事業所の立地が悪い。人間関係が難しい。休みがほしい。
この社員クチコミを見る >>仕事に対する評価や給料面での不満
自分の仕事の成果が正当に評価されないと、何のために頑張っているのかがわからなくなるため、仕事へのモチベーションが続きません。次第に虚しさを感じるようになり、仕事が辛くなっていきます。
仕事に見合った給与が得られない、同業他社に比べて給与水準が低いことも同様に、仕事が辛くなる原因の一つです。頑張ってもどうしようもないことが、意欲低下や気持ちの落ち込みにつながります。
OpenWorkに投稿された、仕事に対する評価や給料面での不満に関するクチコミを紹介します。
退職検討理由: とにかく給与が低過ぎる。仕事の幅が上司によって左右されてしまい、上司の能力次第で正当に評価されない環境に嫌気が差しているため。(営業、男性)
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 正当に評価されないと感じることが多い。プロジェクトが成功したら上司の評価となり、プロジェクトが失敗したら部下の責任とされる。経営陣は事なかれ主義で変化を嫌う傾向がある。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: とにかく休みが少なく、給料が低い。この理由に尽きるかと思います。それに加えて仕事内容はとてもしんどく、若いうちはいいかもしれませんが、とてもじゃないですが、一生続けられるような職場ではありません。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 社内制度で店舗と本部を兼任してキャリアアップをしている風に見せてるがそれに対してのインセンティブや昇給等は一切ない。特に能力がある若手が給料の低さを懸念して退社することがコロナ禍になってから非常に増えた。また本部の人間も古い人間が多く、事業によってはトレンドから置いてきぼりを食らっている。
この社員クチコミを見る >>会社・組織文化へのミスマッチ
企業の理念や価値観に共感できない場合も、強いストレスになります。
例えば、自分なりの信念があるのに会社の方向性に合わせなければならない状況では、意に反した行動を取らざるを得ないため、不満が蓄積していきます。上司のマネージメントに不安がある場合も同様です。
また、社内のガバナンスが働いておらず企業の信頼性が確保できていないケースでは、仕事のモチベーションを失い、辛く感じてしまいます。
OpenWorkに投稿された、会社・組織文化へのミスマッチに関するクチコミを紹介します。
組織体制・企業文化: 価値観が古い。柔軟性がなく、自分たちが古い体質であることに未だに気づいてないのではないかと思う(くらい、古い)。気づいたとしても、そこから脱却しようとする動きがあるように思えない。また、やる気がない人(楽してある程度の給料がもらえればいい人)が多いように感じる。そういうひとたちからすれば、新しい行動を起こそうとする人は邪魔であるため、疎んじられる傾向にある気がする。
この社員クチコミを見る >>組織体制・企業文化: 古くさい。全てが昭和の価値観に基づいている。いまだに年功序列、男尊女卑の価値観が根付いている。
この社員クチコミを見る >>組織体制・企業文化: 基本的に古い価値観かと思う。上がとても偉く、下がお世話係のような風潮はある。それでも以前より改善されたが部署によっては下の人が上司のお弁当を洗ったりしているようだった。上が下を監督したりフォローしたりすることはあまりなく、否定と減点だけして去るように感じた。出勤のタイムカードも無くなり出勤の際に印を押すのみになった。
この社員クチコミを見る >>職場の環境変化に対応できない
今まで働いてきた環境が変わることもストレスの原因となります。頻繁な転勤や異動は、仕事や人間関係を一からやり直すことになるため、辛く感じる人も少なくありません。
また、コロナ禍によって一気にリモートワークが導入されたものの、近年では出社推奨に回帰する企業が増えています。このように、これまでリモートワークで働いてきたのに、突如出社を求められるようになり働き方やライフスタイルを変えなければならないことも、辛さにつながる要因となっています。
OpenWorkに投稿された、職場の環境変化へ対応できないに関するクチコミを紹介します。
退職検討理由: 全国転勤はかなりのストレス。転勤場所についても地方ばかり行く人と、ある程度都会ばかりの人とかなりの差があり。仕事の結果というよりは、上司が誰だったかで評価や異動先が決まる。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: 異動が多く、同じ部署から人が抜けても補充がないことがある。抜けた人の仕事が全て降りかかるため多忙でノイローゼ状態になり退職するケースが多いのにもかかわらず、会社は反省せず異動を言い渡し続けている。将来結婚してマイホーム購入するなどといった夢は現実的に持てない。また工事現場に行くことが多く、現場監督や客先からは建築業界特有の言葉遣いの荒さなどを感じるため、入社前とのギャップは多い。夜間工事の立ち会いなどもあり、心身ともに疲弊している社員が多い。
この社員クチコミを見る >>ワーク・ライフ・バランス: 裁量労働制ではないため制約が多い。リモートワークもあるがルールで決まった時間に会社で出社して働かなくてはならず、仮に決まった時間に働いていないと遅刻・早退扱いになるため、家庭など事情がある人間には働きづらい。フレックスやコアタイムと打ち出しているが実情は違う。
この社員クチコミを見る >>退職検討理由: リモートワークは一時期あったようだが現在は原則禁止で会社の社風や方針として今後もリモートワークが再導入されることはなさそう。特にリモートワーク可能な職場から転職される方は注意です。個人差あるとは思いますがリモートワーク可の職場→全社員出社形式の職場への転職は労働環境が思ってた以上に変わるので一番の転職理由になり得ます。
この社員クチコミを見る >>仕事の辛さを乗り越えるには?4ステップで解説
仕事の辛さを乗り越えるために必要なのは、耐えることではありません。辛さの原因に応じた対処を行ない、心身の負担や環境を改善していくことです。
ここからは、状況に合わせた具体的な対処法を、4つのステップに分けて紹介します。
Step1:自分を守るためのセルフケアをする
仕事が辛いときに最優先すべきなのは、自分を守るためのセルフケアをすることです。無理をせず休息を取り、回復に向けて次のようなセルフケアを行ないましょう。
有給休暇を取得して心身をリセットする
まずは辛さから逃れるために、有給休暇を取得して一時的に仕事から離れましょう。そうすることで、心身をリフレッシュできます。
質の高い睡眠、バランスの取れた食事、軽い運動などを意識する
辛さを解消するには、まず体を回復させることが大切です。睡眠・食事・運動を意識して健康的な生活を送りましょう。
趣味や好きなことをする時間を積極的に作る
好きなことに没頭するとストレス解消につながり、体の回復効果も期待できます。
「完璧主義」や「べき思考」を手放す
「完璧主義」や「べき思考」は、自分を追い詰めることになります。これらを一旦手放し、ありのままの自分を受け入れましょう。
Step2:状況改善に向けたアクションを行なおう
心身の状態が少し落ち着いたら、辛さの原因となっている環境を変えるための行動を始めましょう。原因に応じたアクションを紹介します。
家族、友人、同僚など信頼できる人に相談をする
辛さの原因が人間関係の場合には、信頼できる家族や友人に相談することで、気持ちを楽に持てるようになるでしょう。また、自分をよく理解している人なら、有効なアドバイスを期待できます。
上司に業務負荷の調整、役割分担の見直し、配置転換の希望などを伝える
業務が自分に合っておらず辛いといった場合には、上司に相談しましょう。相談する際には、現状と具体的な希望を明確に伝えることが大切です。
ハラスメントなどが原因の場合は、 社内窓口(人事・相談室)を活用する
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、いじめなどについては、社内の相談窓口に相談すると、事実確認や対応策にあたってくれます。
タスク管理術、時間管理術、効率化ツールの導入など、自分でコントロールできる範囲で改善を図る
業務過多の場合は、上司への相談に加えて、自分で効率化を図るのが有効です。タスク管理術やツールを活用して、無駄なタスクを少しでも減らしましょう。
Step3:専門家の力を借りる
産業医やカウンセラーといった社内外の専門家は、客観的な視点と専門知識であなたの状況改善をサポートしてくれます。場合に応じて、力を借りるようにしましょう。
社内の産業医・保健師に相談する
社内の産業医は、労働者との面談を通じて心身の健康状態や労働環境を把握し、適切な措置につなげられるよう、企業に意見や指導を行なう役割を担っています。一方、保健師は労働者に対して健康状態のヒアリングやアドバイスを行なうのが役割です。いずれも身近で相談しやすいので、ぜひ利用しましょう。
公的な電話・SNS相談を活用する
身近に安心して相談できる場所がない場合には、公的な電話・SNS相談を活用するのがおすすめです。例えば、厚生労働省による働く人の「こころの耳相談」では、電話・SNS・メールで悩みの相談を受け付けています。
精神科医やメンタルクリニックに相談に行く
心身の不調が生じている場合には、精神科医やメンタルクリニックを訪れ、専門家によるカウンセリングや治療を受けることが大切です。
通院が困難な人でも相談できる、オンライン診療を用意しているクリニックもありますので、「仕事に行くたびに吐き気が止まらない」、「仕事中に突然泣いてしまう」など身体の不調が続いている場合は診断を受けるといいでしょう。
Step4:どうしても辛いなら休職や退職も視野に入れる
さまざまな対処法を実施しても状況が改善しない、あるいは心身の限界が近いと感じる場合は、「休む」「離れる」という選択肢も検討しましょう。
休職を視野に入れる
状況が一時的なもので、改善の見込みがある場合には、まず休職を選択して休む時間を確保することも必要かもしれません。休んでいる間に、心身の回復や状況の改善を目指します。
退職を視野に入れる
状況の改善が期待できない場合や、回復する見込みがない場合には、退職を視野に入れたほうがよいこともあります。会社の休職規定を確認したり、産業医、主治医などと相談をしながら慎重に検討をしてください。
仕事を「辞めるべきか」「続けるべきか」判断するための6つのポイント
仕事が辛いときに「もう辞めたい」「ここから逃げたい」と感じるのは自然な反応です。しかし、仕事を辞めることが必ずしも最良の選択とは限りません。一時の感情だけで決断する前に、冷静に状況を見極めることが大切です。
ここでは、仕事を「辞めるべきか」「続けるべきか」を判断する際に参考となるポイントを6つ紹介します。
判断ポイント1:心身の不調が限界レベル
すでに心身に不調をきたし、医師からうつ病などの診断や休職勧告を受けている場合には、医師の判断を仰ぎ、仕事から離れて回復に専念するとしてことを優先させた方がいい場合もあるでしょう。
また、診断を受けていない段階でも、以下のような症状が慢性化して日常生活に支障が出ているなら、一度主治医や産業医にご相談されることをお勧めします。
- 不眠状態が続く
- 食欲が過剰または低下の状態にある
- 吐き気が止まらない
- 下痢や便秘が続く
- 涙が急に出る
- 動悸がする
- めまいがする など
無理をして仕事を続けていると、症状の悪化や長期化を招くことになりかねないため、できるだけ早めに対処することが大切です。
休職しても不調が回復しない、復職すると再び不調になる場合には、会社の就業規則を確認のうえ休職制度が再度利用できるかどうかについて確認し、再休職なのか退職なのかなどの選択肢を検討してください。
判断ポイント2:違法行為・ハラスメントが改善されない
違法行為やハラスメントの問題を、自分だけで解決するのは困難です。サービス残業の常態化、明らかなパワハラやセクハラなどがある場合は、会社や外部機関に相談して改善を目指すことが大切です。
相談しても改善の姿勢が見られない場合で、心身への負担が蓄積していくようであれば転職先を探すなど次のステップに進むのも一つの選択肢となります。
専門家アドバイス:
ハラスメント行為を受けた場合、もしできるようであれば本人に対してどんな言動に不快な思いをしたかを伝え、それを辞めるよう伝えてみてください。「相手が不快な思いをしていたとは気づかなかった」というケースでは、当人同士の話し合いでハラスメント行為がおさまることもあります。
しかし、「立場関係があり本人には直接伝えられない」などの複雑な事情が絡むことも多いと思います。このような場合は、ハラスメントがあった日時、内容、相手、証拠、目撃者などの事実を記録に残し、信頼できる上司や、社内の相談窓口に相談をしてみてください。
相談しても会社が動いてくれないときは、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどに相談することを検討しましょう。
判断ポイント3:会社の将来性に深刻な不安がある
業績悪化が長く続いている、事業撤退の可能性が高いなど、会社の存続自体が危うい場合には、リストラの対象とされるリスクが生じます。
頑張って会社に留まったとしても、希望する業務に携われなかったり、十分な待遇を受けられなくなったりする可能性がある場合は、退職を検討したほうがよいこともあります。
判断ポイント4:環境改善が期待できない
異動希望や業務改善の相談をしたがまったく聞き入れられず、状況が変わる見込みがない場合も、退職を判断するポイントになります。
環境の改善が期待できない場合には、我慢をして働き続けなければなりません。一時的に休んだとしても、復職すれば再び大きなストレスがかかり、心身の状態の悪化を招いてしまうかもしれません。その状態で頑張ったとしても、更なる心身の不調を抱えるリスクも考えなければなりません。
判断ポイント5:価値観・キャリアプランの根本的な不一致
会社の理念や文化、方針などにまったく共感できない場合には、ストレスを抱えながら働き続けなければならないため、辞めて新たな道に進むことも選択肢にいれて検討しましょう。
また、現在の仕事が自分の目指すキャリアパスから外れていると確信している場合も、退職を検討すべき状況かもしれません。
ただし、状況によっては上司に相談をすることで改善されるケースもあります。根本的な不一致なのか、許容できる範囲があるのかをよく見極めましょう。
判断ポイント6:まだ続けられる可能性も?退職決断前に確認すべきポイント
ここまで挙げた判断ポイントに当てはまらない場合や判断に迷う場合には、以下の項目を確認し、今の職場で状況を改善できる可能性が残っていないか、冷静に考えてみてください。
- 辛さの原因は一時的なものか?
- 辛さの原因は構造的な問題によるものか?
例えば、特定のプロジェクトの繁忙期で体力的に辛い場合は、その時期を乗り越えることストレスが軽減し、辞めずに済む可能性があります。一方、会社の制度・体質などの構造や環境に起因する辛さに対しては、根本的な解決が必要です。
社内に信頼できる相談先や支援体制があるなら、まずはそこに相談をしてから、辞めるかどうかを考えるのもよいでしょう。
また、給与・福利厚生・待遇など、仕事内容や環境に少しでもポジティブな側面があり、辛さを感じても続けることにある程度意義を感じられるかも、重要な判断ポイントです。
専門家アドバイス: 辞めるか迷うときは、「辞める原因が一時的か構造的か」「改善の余地があるか」を冷静に見極めましょう。特に気持ちが落ち込んでいる時などは冷静な判断をしづらくなるので、辞める・辞めないという重要な決断は気持ちが落ち着くまで保留にしてください。感情だけで判断せず、信頼できる人への相談や、社内の制度(配置転換希望や社内公募制度、カムバック制度等)の活用も検討を。続けることで得られるメリットや、自分にとっての働く意義も含めて総合的に判断することが大切です。
それでも判断に迷う場合は客観的な情報を集めることから始めよう
冷静に状況を見極めようとしても、仕事の辛さが辞めるべきものなのか判断に迷う場合には、客観的な情報を集めることが有効です。
企業の労働環境について客観的な情報を得たいなら、OpenWorkをご活用ください。
OpenWorkは、国内最大級の社員クチコミや年収データなどを有する転職・就職のための情報プラットフォームで、実際に働いた社員のクチコミを投稿・閲覧が可能です。
自分が働いている会社のクチコミを見ることで、他にも同じような悩みを抱えている人がいるのかがわかり、仕事の辛さが組織全体の問題なのか、一部の問題なのかを判断する際に役立ちます。
また、OpenWorkでは転職した人のクチコミも見られるので、自社に在籍していた社員がどのような理由で転職に至ったのかも知ることができます。他者の転職事例を参考にすることで、辞めるべきなのか続けるべきなのかの見極めが可能です。
まとめ:仕事が辛い気持ちと向き合ったうえで選択を
「仕事が辛い」と感じるのは甘えではなく、心身から発されているSOSサインかもしれません。辛さの原因を冷静に分析し、自分を責めずに受け入れることが解決への第一歩となります。
仕事が辛い場合の対処法は原因によって異なりますが、休息や相談、環境調整、専門家の活用などが挙げられます。
また、辞めるべきか続けるべきかを考えるにあたっては、一時の感情に流されないことが大切です。冷静に状況を判断するために、OpenWorkに投稿されている自社のクチコミを参考にしてください。
専門家アドバイス:
仕事が辛いと感じることは甘えではありません。心身がSOSを出した時はまずは休養をとる、カウンセリングを受けるなどして心のケアを優先しましょう。そして退職を検討する前に「辛さの原因」が一時的な状況なのか、職場環境などの根本的な問題なのかを見極めましょう。信頼できる上司や相談窓口に話すことで改善の糸口が見える場合もあります。
辞める判断は心が疲れている時は保留にし、最終的には経済的・社会的なメリット・デメリットや、生活設計の見通し、経済状況、転職市場の状況や自身の希望などの情報を整理して冷静に対処することが重要です。
専門家プロフィール

藥井遥
■資格
社会保険労務士
産業カウンセラー
国家資格キャリアコンサルタント
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
■プロフィール
千葉県八千代市にて、従業員数名~百名以上規模の企業の顧問社労士として、雇用のルール整備や労使トラブル対応、勤怠や労務のペーパーレス化支援、給与計算・労務手続・助成金申請、福祉・介護事業所における処遇改善加算等の実務に携わる。「ハラスメント対策」や「介護や育児との両立支援」などをテーマとした講師実績も多数。